2008年もたくさんのタイトルがリリースされた国内オンラインゲーム市場だが,今回も,平均年齢とPCスペックを軸としたタイトルの分布図を作成してみた。さっと見ただけでも,昨年とポジションが変化しているタイトルと,あまり変化していないタイトル,この2パターンがあることがお分かりだろう。
基本的には,以前から続くタイトルのほとんどには,高齢化(右へシフト)とローエンド化(下にシフト)の傾向がある。まぁただ,PCスペックという観点でいえば,昨年は必要動作環境がハイスペックだと言われていたゲームでも,今やミドルクラスになっているというのは,至極当たり前の話だ。また年齢にしても,プレイヤーの緩やかな高齢化というのは,なかなか避けにくいものではある。
そんな中から,目立つタイトルをいくつかピックアップするとすれば,プレイヤーの平均年齢が下がっている「ファンタジーアース ゼロ」や「メイプルストーリー」は,注目すべきタイトルかもしれない。プレイヤーの平均年齢が下がっているということは,すなわち新規プレイヤーの獲得ができている可能性を示すからだ。
ほとんどのタイトルで現状維持あるいは高齢化の傾向が見られるなかで,平均値を大きく下げていたタイトルは,ほかには「テイルズウィーバー」や「トキメキファンタジー ラテール」などごく僅かである。
またハイエンド志向のプレイヤーが多かった昨年から,ローエンド寄りのプレイヤー層に変化している「サドンアタック」や「WarRock」も,興味深い一例だ。サドンアタックなどは,昨年末に公式全国大会を開催するなど,積極的な運営展開が目立っていたタイトルだが,そうしたプロモーションが功を奏し,いわゆるカジュアルゲーマー層の獲得に成功しているのかもしれない。
ただそうした一方で,ハイエンド向けFPSの分野は,「Alliance of Valiant Arms」や「Team Fortress 2」といったタイトルが台頭しており,プレイヤーの棲み分けが進んだ結果とも見て取れる。
ちなみに今回の分析で個人的に興味深かったのは,2008年の新規タイトルを中心として,高年齢&ローエンド路線の分野が賑わっているという点だろう。また低年齢&ハイエンド路線の分野で,MMORPGがほとんど存在していない(この図では一つもない)ことも,非常に示唆的な現象だ。MMORPGという分野自体が,かなり“右側に寄っている”(高齢化している)ものだということが見て取れるだろう。
確かにMMORPGというジャンルは,「ファイナルファンタジーXI」や「ラグナロクオンライン」「リネージュII」以降,それらに匹敵するような大ヒットといえる作品は,ここ数年登場してきてはいない。
より若い,新しいプレイヤー層にどうアプローチしていくのか。MMORPGというジャンルは,今やそこが大きな課題となっているのは間違いなさそうだ。
【追記】
記事掲載後に,「カウンターストライク(以下,CS)がなぜハイエンドなのか?」という質問がいくつかきたので,かんたんに説明をしておきたい。
このデータは,「CSがハイエンド向けのゲーム」という意味ではない。あくまで「CSを遊んでいる人のPCのスペックは,全体的に高い傾向にある」という意味である。また逆に,ファンタジーアース ゼロなどに関しても,これは同作がローエンドPC向けのタイトルという意味ではなく,あくまでもプレイヤーの“傾向”を表している点に留意してほしい。
例えばCSについて詳しく説明をすると,CSのプレイヤーは,ハイエンドFPSやいわゆるPCシングルゲームとの相関が非常に高く,それらのタイトルを遊ぶために,比較的頻繁にハイエンドマシンに買い換えて(もしくはパーツの換装を行って)いる層であるということ。
「World of Warcraft」(以下,WoW)などがハイエンド志向であり続けている反面,「モンスターハンター フロンティア オンライン」などがローエンド化しているのも,同様の理屈からだと考えられる。つまり,モンハンを遊んでいるプレイヤーは「モンハンが動けば十分」なのに対して,WoWのプレイヤーは,「他のハイエンドPCゲームも積極的に遊ぶ」層というわけだ。
※参考:カウンターストライクのプレイヤーがほかに遊んでいるゲーム
1位 Team Fortress 2
2位 A.V.A
3位 サドンアタック
4位 バトルフィールド 2
5位 マイクロソフト エイジ オブ エンパイアシリーズ
6位 Unreal Tournamentシリーズ
7位 クロスファイア
8位 OPERATION7
9位 バトルフィールド2142
こちらは,平均年齢と「月にオンラインゲームに使う金額」の平均を軸にしたタイトルの分布図だ。消費金額は,そのタイトルに対して使っている金額ではなく,あくまでも“遊んでいるオンラインゲームすべて”に使う金額となっているのだが,それでも,だいたいの傾向などは見えてくる分析結果となった。
この分布図でポイントといえるのは,低スペックマシンで遊んでいるプレイヤーが,必ずしもお金を持っていないわけではないというところだろう。「トキメキファンタジー ラテール」や「R.O.H.A.N」などが最も特徴的な例になるが,低スペックであること,あるいは低年齢層プレイヤーが多いことは,必ずしもゲームに使う金額の少なさを示すものではない。
低年齢層プレイヤーが多いながらも高い収益性を示す,「アラド戦記」やトキメキファンタジー ラテールの秘訣はなんなのか。また他のタイトルとは何がどう違うのか。オンラインゲームの運営に携わっている人は,そのあたりに思いを馳せると,いろいろと見えてくるものがあるかもしれない。
先ほど示したPCスペックでの分布図,そしてこのプレイヤー単価の図を見比べていけば,各タイトルのプレイヤー層の面影がなんとなくつかめてくるはず。業界人の方は当然だが,プレイヤーの皆さんも,この図をもとに自分の遊んでいるタイトルの傾向などを考えてみると面白いだろう。
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